ハンドドリップをするとき、ドリッパーと一緒に必要になるのがドリップポット。
ドリップポットはいわば”コーヒー専用の薬缶”
狙った位置へお湯を出せるよう口先が細くなってたり、淹れている間ずっと手に持っていても負担にならないよう通常の薬缶よりも容量が少なめなのが特徴です。
形、サイズ、素材の違う様々なタイプが存在し、自分にピッタリの1台を見つけたいところですが、何を基準に選べばいいのか?
特に初めてドリップポットを探す方はわからないことも多いのではと思います。
淹れやすさやコーヒーの味にも直結するため適当に選ぶわけにもいきません。
ということで、今回はドリップポット選びのポイントとおすすめポットについて紹介します。
以前一度解説したこともありますが時間を経てラインナップが変化してきたこともあり、この機会に改めてより詳しく解説していきたいと思います。
選び方のポイント
サイズ(容量)
ドリップポット選びで大事なのは自分にピッタリのサイズ(容量)を選ぶこと。
大きすぎも小さすぎも良くない。
これは私が最も重要だと感じる点。

靴や洋服選びと同じでサイズが合わないともうそれだけで「失敗した~」となってしまうこともあります。
ドリップポットもドリッパーと同様に大は小を兼ねないことがほとんどで、
一人暮らしの方や普段1杯分しか淹れない方なら小容量、友人や家族全員分を一度に淹れるような方なら中~大容量のように、自分が最も使用頻度の高い容量を基準にサイズ選びするのがポイントです。
サイズが大きすぎると無駄に重く余分なお湯も必要になり、逆に小さすぎるとお湯が足りず何度も継ぎ足さなければならなかったりします。
ただし、抽出量ギリギリを選ぶのはNG。
注いだお湯がすべてカップに落ちるわけではなく、いくらかは粉に吸われるため注湯量=抽出量とはならず、いくらか余分に注ぐ必要があるからです。
また容量ギリギリだと最後は大きく傾けることになりお湯の出方も不自然になってしまう。
淹れ終わった後に少しお湯が余るくらいがベストです。
目安として私個人の感覚にはなりますが、淹れる杯数が1~3杯なら抽出量+100~200ml程度、淹れる杯数が4~6杯なら抽出量+200~500ml程度が使っていてちょうどいいサイズ感。
例えば、300ml(約2杯分)のコーヒーを淹れるなら300ml+100~200ml=400~500mlくらいの容量のポットという感じです。
もう一つ、ポットの7~8割くらいお湯が入っている状態も基準の1つとしておすすめ。
軽く傾けたとき自然にお湯が出ると同時にお湯も冷めにくいため、最も淹れやすい状態になります。

最後にまとめとして、淹れる杯数に対しておすすめの容量を記しておくのでよければ参考にしてみてください。
- 1杯のみ(150ml~200ml) → 250ml~400mlのポット
- 1~2杯(200ml~500ml) → 400ml~700mlのポット
- 3~4杯(500ml~800ml) → 750ml~1.2Lのポット
- 4~6杯(800ml~1.2L) → 1L~1.7Lのポット
注ぎ口
注ぎ口は大きく2タイプ。
根本から先端までが一定の細さの細口タイプと、根本が太く先端が細い鶴口タイプがあります。

細口タイプの特徴は、どのように注いでもお湯の出方が常に一定なところ。
ずっと同じ湯量をキープしやすくドリッパーの上で回し注ぐときにも湯量が安定しやすいので、初心者の方にもおすすめです。
ただ、大量のお湯を出すのは苦手なので湯量を増やしたいときには不向きです。

反対に鶴口タイプの特徴は、湯量を変化させられるところ。
傾け方次第で湯量を調整できるため、細くも太くも注ぎたい場合に向いています。
前半ゆっくり後半素早くのような変化をつけたり、頻繁にお湯を移し替えたりするときに活躍します。
一気にお湯を注ぐタイプのドリッパーとも相性が良いです。
このタイプは傾け方で湯量が常に変化するため、使いこなすには少々慣れが必要かもしれません。

本体の形
ポット本体の形も2タイプ。
主に本体や持ち手を含めた全体の形が縦長と横長のものがあります。

横長のタイプは、持ち手と注ぎ口の距離が離れているのが特徴。
一見すると注ぎにくそうにも見えますが、距離があることで手首を少し回すだけで注ぎ口は大きく動き、少ない動作で軽々ドリップできます。
注ぎ口は前方向へ伸びて口先にポット本体が干渉しにくく、お湯を注ぐ際はどの位置へも粉の上にお湯を置くように注ぐことができます。
反面、手元を少し動かすと先端も大きく動き細かなお湯の調整は苦手なところがあり、湯量が一定の細口の注ぎ口と組み合わせるのがおすすめ。
縦長のタイプは、持ち手と注ぎ口の距離が近いのが特徴。
横長のタイプとは逆に手の動きをお湯に反映させやすく、細かいお湯の調整が得意です。
注ぎ口は細口鶴口どちらとも相性が良く、両方のラインナップが豊富にあります。
こちらは注ぎ口が上方向に伸びていることでポット本体がドリッパーのフチへ干渉しやすく、中央より奥側へ注ぐときは少し気を使います。
ポットを傾けてお湯に勢いをつけるか、細く注ぎたい場合はやや上方からお湯を落とすかたちとなるので注意です。
どちらも一長一短なところがあり、どちらが良いかは個人差によるところが大きいため自分の淹れたいスタイルで選ぶ必要があります。
耐熱加工の有無
コーヒーのドリップには90度前後のお湯を使うため、素手で扱うには何かしらの耐熱加工は必須。
無加工の場合はミトンや布巾を使うか後から紐などを巻き付ける方法もありますが、あらかじめ耐熱加工されていたほうがなにかと便利です。
特に持ち手と蓋のツマミ部分に触れることが多いため、主にこの部分の耐熱加工がどうなっているかを確かめる必要があります。

ここだけ樹脂やウッドなどの別素材になってるか、熱が伝わりにくいように薄く細く、といったふうに加工されていることが多く、どちらかというと別素材になっている方が熱は伝わりにくい傾向があります。
薄く(細く)加工されているタイプは、薬缶などからお湯を移し替えて使うのであれば多少温かくなる程度でも、直接熱源にかける場合は持てなくなるくらい熱くなることが多いです。
対応熱源、素材
意外と盲点なのが対応熱源。
実はすべてのドリップポットが熱源対応しているわけではなく、非対応のものも意外と多い。
(小容量モデルに特に多い)
お湯を沸かす際に別の薬缶や電気ケトルを用いるのであればこの点はスルーして問題ありませんが、
直接直火やIHにかけるのであれば、それらに対応しているかどうかを確認する必要があります。
素材はステンレス製が最も多くポットの種類も豊富。
軽い、丈夫、お手入れが楽などの特徴があり、特に理由がなければステンレスを選んでおけば間違いないかと思います。
見た目にもこだわりたい、インテリア性も重視したいという方はホーロー、銅、樹脂といった選択肢もあります。
- ホーロー製 … ◯保温性が高い ☓重い
- 銅製 … ◯インテリア性が高い ☓高価
- 樹脂製 … ◯軽くて安価 ☓熱源非対応
電気ケトルとの違い

電気ケトルとの大きな違いは電源以外だと、
- 温度調節、保温、タイマーなどの便利機能がついているかどうか
- 故障しやすさ
- 容量の選択肢
といったところ。
実は価格や注ぎやすさはそんなに変わらず温度調節や保温機能が便利なので、最近は電気ケトルの方が主流になりつつあります。
ただドリップポットに比べて壊れやすかったり、小容量モデルの選択肢が少なかったりなどのデメリットもあり、温度調節や保温機能などの機能が必要かどうかを一つの基準にしてみるのが良いと思います。
すでに湯沸かし用の電気ケトルをお持ちであれば、湯沸かしは電気ケトル、コーヒーはドリップポットというような使い分けもおすすめです。
おすすめポット&ケトル
ハリオ ドリップケトル・ヴォーノ
素材やサイズが豊富なハリオのドリップケトル。
私が初めて買ったドリップケトルでもあり、初心者の私でも淹れやすいと感じたのが印象的でした。
注ぎ口が細く本体や持ち手と距離があることで、細く注ぎ続けたりドリッパーにお湯を置くように注ぐのが得意。
直火とIHに両対応し、持ち手と蓋ツマミには耐熱加工がされていて実用性も高い。
万人におすすめなケトルです。
ハリオ V60 ドリップケトル・エアー
ヴォーノと同じハリオ製のケトルですが、見た目は全く異なる。
本体はケトルとしては珍しい樹脂性で半透明かつメモリもついてるため、中の湯量が一目でわかるのが特徴。
また、価格も非常に安い。
保温性は高くないですがケトル自体が非常に軽く、1,2杯分をサッと淹れるのに便利なケトルです。
容量は350ml程度、サーバーや計量カップなど色々な用途でも使えます。
カリタ コーヒーポット 700ml
1~3杯分を淹れるのにちょうど良い細口のポット。
目立った特徴はありませんが、容量、注ぎ口、扱いやすさなどにこれといった不満がなく、クセがなく誰でも扱いやすいポットです。
強いていえば、蓋ツマミが時間とともに熱くなるのが難点。
これとよく似た廉価版がAmazonなどでちらほら存在し、そちらも意外と悪くないかも。
ニトリ ドリップカップ
非常にコンパクトなニトリの1杯専用のポット。
こういったコンパクトタイプは意外とコーヒー器具メーカーからは販売されておらず、さすがニトリ。
ブラックとシルバーの2色があり、ブラックはフッ素加工付き。
熱源には非対応となっています。
1杯分のハンドドリップやドリップパックを淹れるのに最適で、薬缶からお湯を移してサッと淹れられます。
珈琲工具 ツードリップポット Pro
とにかく真下に注げるポット。
真下へお湯が落ちるよう注ぎ口が下を向いているのがなによりの特徴です。
注ぎ口自体も非常に細く作られており、直径は6mm、内径はなんと4.5mmしかなくドリップポットの中でも最細クラス。
常に細いお湯を真下に注ぎ続けることができます。
専用の持ち手カバーや蓋は別売りされており、保温性や熱さが気になる方は必要に応じて追加購入することもできます。
ユキワ M5 コーヒーポット
太くも細くも注ぐことのできる鶴口タイプのドリップポット。
M型はスタンダート的な位置づけで、他にも注ぎ口や本体の形状が異なるタイプがいくつか存在します。
容量選択肢は350ml、750ml、1000mlから選択可能。
このポット、購入後そのままの状態ではあまり扱いやすいとはいえず、正直おすすめにいれるかどうか迷ったんですが、納得いく加工ができればこの上ない相棒となってくれます。
ペンチやハンマーを使って自分自身で注ぎ口などを加工して使ってらっしゃる方も多いみたいです。
自身での加工が不安な方は、ユキワ公式さんで加工依頼ができるためそちらを利用する方法もあります。
カリタ ウェーブポット
カリタのウェーブシリーズの中の1つで、本体のウェーブ加工が目を引くデザイン性の高いポット。
持ち手と蓋ツマミはウッド加工され、おしゃれさと利便性が◯。
熱源は直火、IHともにOK。
容量が1Lあるので1杯用としては少し大きめ。複数杯をメインに淹れる方におすすめのポットです。













コメント